平成24年度臨床心理士資格試験情報<1次試験>

平成24年度臨床心理士資格試験<1次試験>が平成24年10月14日、東京ビッグサイトで行われました。
マークシート試験では以下のような問題が出題されました(受験生の記憶を基にしているため正確ではない情報も含まれていると思われますがご了承下さい)。

<基礎心理・理論>

■奥行き知覚(①~⑤は選択肢の記述)
①両目が見えることは奥行きを知覚出来る条件である。
②密集した点が、一定方向に向かい徐々に大きさが変化することは、奥行きの知覚の手がかりとなる。
③移動する乗り物に乗っている時、手前にあるものと奥にあるもので移動する早さが違って見える現象は、奥行きの知覚と関連する。
④輻輳運動に関して
⑤両眼の視差に関して

■箱庭の起こり、日本への導入の歴史を問う問題
⇒ローエンフェルド/カルフ/ユング/河合隼雄など(人名の組合せと、年代や国名などがいくつか組み合わさって出題)

■SSRIの作用機序(①、②は選択肢の記述)
①セロトニンを破壊する
②セロトニンの再取り込みを阻害する

■両側性転移(片側の手で学習した動きについて、反対側にも効果が見られる)/般化

■Millgram-権威への服従

■マズローの欲求階層説

■行動療法でオペラントとレスポンデントに基づく技法を選ぶ問題

■汎適応症候群の提唱者

■ストレス研究-Lazalus、Sellieなど

■躁的防衛

■投影同一視

■見捨てられ抑うつ-Winicott

■コンテイナー-Bion

■「Freud.Sは構造論を抵抗の説明の為に提唱した」

■「Ericksonのモデルにおける青年期の課題は「アイデンティティの拡散―絶望」である」

■「M.Kleinの理論における抑うつポジションでは、分裂 Splitting の概念が基盤となっている」

■「ユングのエクストラコンプラックスについて、フロイトは、意味のないものとして否定した」

■特別支援教室(検定教科書を用いるか、設置は義務か、必ずしも同学年のクラス編成か?)

■社会福祉用語が混ざって出題(ソーシャルグローバリゼーションなど)

<統計>

■パス解析、逐次モデル

■共分散構造分析、GFI値(GFIは0から1の間を取り、0に近いほど良いというような文章)

■バリマックス回転-直交回転、プロマックス回転-斜交回転

■尺度に関する問題(名義尺度-ノンパラメトリックな検定)

<心理査定>

■風景構成法(A、B、Cは選択肢の記述)
風景構成法を提唱したのは A であり、当初は B に対する箱庭療法が可能かどうかを見極めるために導入された。枠付けは C が行う。
A   B      C
中井久夫 統合失調症  検査者
河合隼雄  うつ病      被験者

■DAP-マッコーバー

■描画法(家族描画法-KauffmanとBurns、バウムテスト-Koch。その他)

■TAT(SAT、CATについてそれぞれの対象や特徴、提唱者についての選択肢が出題された)

■MMPIのアセスメントフィードバック事例問題

■津守式はDQを求められるか

<心理療法>

■心理劇(①~③は選択肢の記述)
①即興性を重視するため、メンバーが集まり次第、自己紹介やミーティングは行うことなく、すぐに役割の割り当てを開始する。
②役割性を重視する技法である。
③今、ここを重視する技法である。

■逆転移

■ゲシュタルト療法(ホットシート、Perls)

■ブリーフセラピー

■イメージ療法

<精神疾患>

■うつの思考(①~③は選択肢の記述)
①二者択一的な考え
②結論の飛躍
③侵入思考

■境界性パーソナリティ障害の特徴(①、②は選択肢の記述)
①M.Kleinが提唱した分裂Splittingの概念を理解することは、境界性パーソナリティ障害を理解するのに役立ちうる。
②境界性パーソナリティ障害の現実検討は、統合失調症のそれより、むしろ神経症のそれに近い。

■ADHDのアセスメント(①、②は選択肢の記述)
①共同注意、指差しの欠如
②衝動性、多動性、不注意が2つ以上の場面でみられること

■認知症

■気分障害

■摂食障害

<法律>

■DV法における措置命令について。通告や措置命令の発令?などはどの機関が行うか?(A、B、Cは選択肢の記述)
   A B C
配偶者暴力相談センター 福祉事務所 地方裁判所
警察 都道府県知事 家庭裁判所

■少年法における被害者の権利(①~④は選択肢の記述)
Cl.:中年の男性。駅で殴られ怪我を負った。加害者が20歳未満である事がわかり、Cl.は、自分はどのような補償が受けられるのか不安であると訴えた。そこでCp.は少年犯罪においても被害者の権利が保障されてきている事を説明した。以下のうち、少年犯罪における被害者の権利として当てはまらないものはどれか。
①加害少年の犯罪歴の照会
②少年の審判の傍聴
③少年が収容されている少年院を知る事ができる
④審判の状況についての情報を得る事ができる

■児童相談所の機能。
所長は地方裁判所(家庭裁判所?)を通さなくても一時保護が可能、28条措置の場合、20歳まで措置延長することが可能、など。

<事例問題>

■ロールシャッハテスト
大学の相談室における女子学生の事例。片口式の表記でスコアが示され、そのケースについて2問、片口法に関して1問が出題されました。スコアはきちんと憶えていないのですが、Mが多く、Fに比してCが少なかったので外拡型ではないと判断した記憶があります。Blood反応、骨とかAntっぽい反応(?)もありました。Cショックは特に見られず。Wの比率はDに比して大きく、ddはそれほど多くはなかったと思います。選択肢は、衝動性、強迫性に関するものがあったと思います。選択肢の1つに、「強迫性障害が疑われる」というものがありました。
・問.ロールシャッハの片口法に関する問題(①、②は選択肢の記述)
①統合失調症の患者などにみられる特殊な反応に対するスコアリングは特に決められていない。
②形態水準の判断には、一般にどの程度その反応が出現するかは考慮されない。

■災害時の緊急支援(各問題①~⑤は選択肢の記述)
・問.一週間、臨床心理士として派遣される場合、どのような対応が望ましいか。
①求められれば、心理支援以外のことでも行う。
②児童には言語表現が難しいと思われるので描画法を取り入れる。
③児童は表面上元気であるように見えても、目に見えないだけで心に傷を負っているので、心理療法が必要だと管理職に申し出る。
④教職員や保護者を対象に、心理教育・研修を実施する。(急性反応として起こりうる症状を説明し、現時点ではそれらの症状が起こるのは自然なことであることを説明するというようなニュアンス)
⑤全クラスを巡回して気になった児童について報告する。
・問.洪水で小学校も浸水し、被害が出た小学校へ派遣される場合、正しいものを2つ選択せよ。
①臨床心理士が放課後に児童と遊んでいるとき、児童らが「洪水ごっこ」と言って遊びだしたので、やめさせた。
②描画法を実施した。
③児童を対象にリラクゼーションを実施した。
④家族を失った児童には、全員、面接を行った。
⑤災害については、話しかけられれば話を聞くが、臨床心理士からは話題にしない。
・問.児童に以下のような症状が見られた場合ASDに該当しないと判断できるものはどれか。
①災害で飼い犬が死んでしまい、ずっと泣いている。
②川に流されそうになったため、川に近づく事ができなくなった。
③悪夢を見て夜中に目が覚める。
④落ち着かない、いらいらしたりボーっとしたりする事が多くなった。

■大学の学生相談室に大学教授が相談してきた事例
ゼミで担当している男子学生が、同じゼミの女子学生にしつこく話しかけ、女子学生が困っている。その男子学生は、鉄道が趣味で大変詳しく、その話ばかりするところがある。教授は彼がアスペルガーではないかと思い、相談に訪れた。どのように対応するか。(①~④は選択肢の記述)
①教授の話から、本人の状態はアスペルガーの特徴に当てはまっているので、当該男子学生の家族に伝えて受診を勧める。
②困っている人の相談を受けるというスタンスを重視し、話しかけられて困っている女子学生の相談を受けることとする。
③ゼミでの当該男子学生や女子学生に対する関わり方などをアドバイスするなど、当面は教授に対するコンサルテーションを主体とする。
④当該男子学生本人と継続的な面接をする事を優先する。

■大学の学生相談室における、学生本人が自分はアルペルガーではないかと疑い相談してきた事例(①は選択肢の記述)
「自分はアスペルガーだと思う、診断をつけてほしい」といって来室。詳しく聞くと、ゼミのグループ発表でまとめ役をしていた際、数人から「空気が読めない、コミュニケーションが下手」と責められた、というエピソードを話し、アスペルガーの特徴に当てはまっていると気づいたと話した。本人の了解を得て、同じゼミで本人と仲も良い学生に話を聞いたところ、「本人は空気が読めないようなタイプではなく、気配りが出来るほうだと思う。本人を責めた数人については、普段から態度が悪く周りも困惑している。むしろ最近本人が細かい事を気にしすぎたり、がんばり過ぎたりしているようで気になっている」という情報が得られた。どのように対応するべきか。
①本人の意見を尊重し、診断可能な医療機関を紹介する。
・問.自閉症スペクトラムの査定に関して、共通する特徴は何か(①~④は選択肢の記述)
①協調運動の不器用さ
②相互的反応性の欠如
③視覚優位性
④心の理論の欠如

■家族療法の事例
Cl.:25歳女性、引きこもり。仕事を辞めて家にいる。 Mo.が申し込んできた。受付者が本人およびFa.も一緒に相談に来ることは可能かと訊ねると、「本人は説得すれば連れて行くことは可能だと思うが、父親は絶対に行かないと思う」と話した。しかし実際には、Fa.、Mo.、本人の3人で相談に訪れた。 面接を始める際、Cp.はまず、ここまで来る途中で迷わなかったかと尋ね、相談に来た事をねぎらった。その後主訴について訊ねると、Fa.が最初に話し始めた。Fa.は、「甘く育てすぎた、この歳になっても仕事もせずに家にいるなんて」と厳しい口調で話した。Cl.は不機嫌そうに黙っており、Mo.はとりなすような感じ。(細かいやり取りは忘れました)Fa.の発言に対し「お父さんこそ外泊が多いけど何をしているの」と詰問した。
・問.初回面接におけるCp.の対応について(①~④は選択肢の記述)
①Cp.が途中迷わなかったかと尋ねたり、ねぎらいを伝えたりしたことは、不要なことなのでするべきではない。
②Mo.が申し込んできたのだから、最初にMo.から話を聞く。
③口火を切ったFa.の意見をまずは尊重しつつ、Mo.やCl.の様子、反応も注意してみておく。
④つらい中相談にやってきたCl.本人の思いをまずは尋ねる。
⑤家族の、非言語的な部分でのやりとりに気をつける。
・問.今後の方針について(①は選択肢の記述)
①Mo.は、この家族のなかで、Fa.とCl.の間を取り持ち、バランスを保つ役割をしているので、その役割が今後も維持できるように促す。

■箱庭療法の事例
男児、2~3回箱庭を行ったが進展なし。砂に触らない。唯一、ミニカーをおくという行動だけが見られる。どうすべきか。(①~④は選択肢の記述)
①ケース自体を中断する
②身体を動かす遊びをするかとCp.から提案する
③ミニカーの種類を増やして様子を見る
④しばらく様子を見る

■産業分野でのカウンセリング事例(復職支援)※不適切なものを選ぶ(①~③は選択肢の記述)
①復職計画をたてる
②管理職と同僚にコンサルテーションする
③復職は本人の判断を尊重する

■スクールカウンセリング事例