臨床心理士資格試験(一次試験)の勉強について

 京都コムニタスでは、2008年4月より臨床心理士資格試験対策コース(通信制)を開設いたしております。
臨床心理士資格試験は、学科試験と面接試験の二度の試験からなっています。
学科試験は、基礎心理学、臨床心理学の理論を問う問題から、臨床心理の現場における対応の仕方を問う問題など、臨床心理士に要求される知識と資質を問われる試験になっています。
しかし、広範囲な出題領域に反して、臨床心理の現場は教育、医療、福祉など多岐に渡り、各領域によって業務内容が異なることも多いため、御自身の領域で行わない業務内容を勉強する時間を確保することが難しいという状況があるのが現実と思います。

  例えば、学校現場で仕事をされている方は、心理テストを実施する機会がほとんどないため、ロールシャッハテストをはじめとした心理査定技法に精通することが難しいということをお聞きしますし、病院で働かれている方でも特定の心理テストのみの知識は深まるが、幅広い知識を身に付けることは出来ない、ということもお聞きします。
更に、御自身のケース報告書をまとめる時間、現場での業務を遂行するために研究に励む時間など、現場での業務以外にも多くの時間を仕事に費やしておられるため、資格試験の勉強をまとめてするだけの時間、余力がない……結局今年はあきらめよう……という方も多いようです。

 また、勉強をするに当たっては、過去問を中心に進めていく方法を取られる方が多いですし、その方法が妥当であるとも考えます。
しかし、青本と呼ばれる「臨床心理士資格試験問題集」(誠信書房)は問題と解答のみでなぜその解答になるのかについての解説はありません。
2007年以降は『新・臨床心理士になるために』(誠信書房)が発売され、直近2~3年分の問題に解説が付与されるようになりました。
しかし、解説でその問題の解答の根拠は分かっても全く同じ問題が出題される可能性は少なく、出題されている問題からその問題に関連する領域の勉強をすることで、様々な問題に対応していけるようになると思われるため、解説+αの勉強が必要になります。

過去問を何回も繰り返し解き、ほぼパーフェクトに解けるようになって試験に臨まれる方もおられるようですが、過去問に執着しすぎて過去問の解答の根拠となる部分を集中的に勉強していた場合、過去問と異なる傾向の試験問題が出題された時に対応できなくなってしまいます。
それ故、解説+αの勉強が必要になるのです。その際には、参考となる本・資料を基に近接領域、分野の勉強を進めることが必要です。
以下で、参考書、辞書の一部を挙げておきます。

【参考書】
・キーワードコレクション心理学 重野純 新曜社
・心理学概説 山内弘継・橋本宰 ナカニシヤ出版
・臨床心理学と心理学を学ぶ人のための心理学基礎事典 上里一郎監修 至文堂
・心理査定実践ハンドブック 氏原寛 他編 創元社
・心理療法ハンドブック 乾吉佑 他編 創元社
・心の病理学 大塚義孝編 至文堂
・心理査定プラクティス 岡堂哲雄編  至文堂
・心理面接プラクティス 大塚義孝編 至文堂
・臨床心理学事典 岡堂哲雄監修 至文堂
・DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版 米国精神医学会 医学書院
・DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 米国精神医学会 医学書院
・心の専門家が出会う法律-臨床実践のために 津川律子、元永拓郎、佐藤進 誠信書房

【辞書】
・心理臨床大事典[改訂版] 氏原寛 他編 培風館
・カウンセリング辞典 氏原寛 他編 ミネルヴァ書房
・心理学辞典 中島義明 他編 有斐閣
・心理臨床学辞典 日本心理臨床学会 編 丸善出版

  上に挙げた参考書、辞書はほんの一部です。
  上に挙げた参考書、辞書を全て手元に揃えるだけでも、多大なお金がかかりますし、正直、中には試験対策のみに使用し、その後はほとんど活用しないままの本も少なくありません。
また、例え上記の本を揃えたとしても、必要な情報が各本のどこに記載されているかは自分で一冊一冊調べていくしかなく、復習の度に「どの本のどこに載っていたか」から勉強を始めることは、忙しくなってきた身体にとってはかなりの苦労になります。またロスタイムも大きくなります。
  要するに、資格試験において、解答をするために必要な「根拠」を提出するには、一つの辞書や書物に頼っていても無意味で、多くの情報を駆使して紡ぎ合わせていく必要があるのです。
法律家でいう六法全書のようなものは、臨床心理の世界には確立されていないと言ってよいでしょう。